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寄贈品 №39

少年満洲読本

著者 長與善郎(1888~1961) 発行 日本文化協会・新潮社

1938(昭和13)年5月20日 サイズ22.5×15.5 284頁 

満州の地理・歴史・日本との関係などを紹介する、少年向けの本

 この本に登場するのは一郎くんと二郎くん。夏休みにお父さんと満州へ旅行に行くことになりました。事前学習として、満州とはどういうところなのか、日本とどんな関係にあるのかを調べてみることに。満州の気候や地理、満州事変はどうして起こったか、なぜ日本の生命線と言われるか、といった疑問に答える形で親子の問答が続きます。

 実際の旅は、立ち寄った各都市の特徴や有名な産物などについて、お父さんが解説。第1次弥栄村・第2次千振村開拓団にも立ち寄り、団長さんや開拓団で暮らす人たちの話を聞く場面が登場します。旅の終わりには、様々な人種が住む満州の地を治めていく統治者の地位に立った日本人は、もっとえらくなってその資格を備えなくてはならない。満州を起こした者として、東洋平和に寄与する義務と使命を負うのだと確信するのです。

 序文を寄せた木戸孝一*は、「満州と日本は精神・国防・産業・文化の面で、切っても切り離せない関係にある」とし、「日満両国民が互いに理解を深め、東洋平和のために尽くさなくてはならない。そして、この読本が少年たちだけでなく、一般父兄や家族にも読まれ、満州のことをよく知るうえで重要な効果を持つだろう」とうたっています。子どもも大人も「優れた日本人」たる意識が植え付けられていきました。

 

* 1889年-1977年。幕末明治の政治家木戸孝允の孫。昭和天皇の側近を務め、政治家・官僚として東條英機内閣成立などに関わる。戦後A級戦犯として終身刑を受けるが、のち仮釈放となる。

読本扉絵