· 

寄贈品 №14

すずらんの押し花

1945(昭和20)年 サイズ約20㎝

酒井貴穂:1926年生 長野県下伊那郡和田村出身 下伊那報国農場

下伊那報国農場隊として満州へ渡った酒井貴穂さんが、

手紙とともに家族に送ったすずらんの押し花

 

長野県下伊那郡和田村(現飯田市南信濃)に生まれた酒井貴穂さんは、女子青年団のリーダーとして、満州への移住を勧める役割を担いました。一人娘だった貴穂さん。ご両親は反対されたそうですが、自身も下伊那報国農場勤労奉仕隊となって、1945年5月海を渡ります。半年の作業を終えて10月には帰国する予定でした。ところが、8月のソ連参戦と日本の敗戦によって、貴穂さんは現地で生命を落とし、帰らぬ人となってしまうのです。


 

このすずらんの押し花は、彼女が故郷の家族にあてて送ったもの。大陸の風をすずらんに乗せて届けたかったのでしょうか。それだけに、敗戦間近に送り出され生命を散らした彼女の魂が、ふるさとを恋うてすずらんの花に宿りなおしているような、そんな気がします。

 

*『長野県満州開拓史』(1984)によると、下伊那報国農場は、長野県下伊那郡出身者からなり、1944年3月から東満総省宝清県東横林に入植。敗戦時28人が在団していたが、ソ連軍の攻撃や集団自決でほとんどの隊員が亡くなり、帰国できたのは2人のみとなっている。